油断のできない妊娠糖尿病ってどんな病気?
妊娠糖尿病と診断されるのは、全体の妊婦さんの7~9%の割合に上ります。妊娠糖尿病になると、母体にも胎児にも健康への影響があるため、妊娠糖尿病になることは絶対に避けたいもの。いったい、どうすれば妊娠糖尿病を予防することができるのでしょうか?
■妊娠糖尿病はふつうの糖尿病ではない?
妊娠糖尿病とは、妊娠時の糖代謝の異常を指します。ちなみに、糖尿病の方が妊娠した場合には、妊娠糖尿病ではなく、糖尿病合併妊娠と呼ばれます。
妊娠糖尿病では、生活習慣や遺伝などが原因の慢性的な糖尿病とは異なり、妊娠期の一時的な高血糖状態がみられます。
「一時的なものだったら、そんなに心配しなくても大丈夫よね?」と、妊娠糖尿病を軽くみないようにしましょう。
確かに、子供を出産すれば、血糖値は安定するかも知れません。しかしながら、実際には、血糖コントロールをして適切な治療を行わないのであれば、母体はおろか、胎児の命にまで危険を及ぼし兼ねない症状なのです。
妊娠糖尿病は、生活習慣病が原因というよりは、高齢出産や妊娠による急激な体重の増加、そして遺伝的要素が関係するものです。
そのため、規則正しい生活をし、体重管理をしっかり行っている妊婦さんであったとしても、妊娠糖尿病にかかることがあります。
■どうして妊娠糖尿病になるの?
妊娠糖尿病は、妊娠すると胎盤から分泌されるプロゲステロンなどのホルモンが、インスリンの働きを抑制するため、血糖値が上昇することによって引き起こされます。
妊娠後期になると、母体は体に必要な栄養素やエネルギーなどを蓄えるために、大量のインスリンを必要とします。
しかし、インスリンの働きを邪魔したり、インスリン自体を破壊してしまうホルモンのせいで、体内のインスリン量が足りなくなり、結果として妊娠糖尿病になってしまうのです。
母体が高血糖の状態になると、大量のブドウ糖が、血液と共に胎児に送られることになります。そのため、高血糖は母体だけではなく、胎児にも影響を与えるものとなります。
■妊娠糖尿病が母体と胎児に与える影響とは?
似て非なるものである糖尿病と妊娠糖尿病は、高血糖の状態が引き起こす症状や、合併症が怖い、という点では同じだと言えるでしょう。
妊娠糖尿病が母体に与える影響としては、腎症や網膜症、羊水量の異常や妊娠高血圧症候群、帝王切開のリスクが高まる、などのような影響がみられます。
また、妊娠糖尿病が胎児にもたらす影響としては、流産のリスクが高くなったり、奇形児や難産の原因になる巨大児、その他にも、低血糖や心臓の肥大などの影響があります。
母体の高血糖状態が、その胎児をも高血糖にさせてしまうため、糖代謝に異常のある妊娠糖尿病と診断されたら、早めに治療を開始しましょう。
■赤ちゃんのためにも妊娠糖尿病を治療しよう!
もしも妊娠糖尿病と診断されてしまったのであれば、食事療法と運動療法のほか、薬物療法も行うことになる場合もあります。
血糖コントロールをするために、食事療法では、カロリー制限を行います。しかし、極端に走らず、お腹の中の赤ちゃんがしっかり栄養を摂取できるよう、1日の摂取カロリーを守って、バランスのよい食事を心掛けるようにしましょう。
また、分割して食事をとることも、妊娠糖尿病の治療には効果的です。1食分の量が多いと、どうしても食後高血糖になってしまいます。
そのため、1日に必要な食事量を何回にも分けて食べることで、食後に血糖が急上昇することを避けることができるでしょう。
また、炭水化物からではなく、食物繊維の多く含まれた野菜や、キノコ類などから先に食べるようにするなど、食べ方にもひと工夫することが大切になります。
食事療法に加えて、ウォーキングなどの有酸素運動を、毎日の生活に取り入れるようにしましょう。
安定期に入っているとはいえ、激しい運動はもちろん避けなければいけませんが、休憩を間に入れつつ積極的に体を動かすことによって、出産時にも楽に分娩することができます。
■妊娠糖尿病と診断された際の薬物療法とは?
胎児に影響を与える経口血糖降下薬は、妊娠中の体では使用することができません。そのため、妊娠糖尿病の薬物治療として、インスリン注射による治療を行うことになります。
胎児に与える影響を心配される方も少なくないようですが、皮下注射から投与されたインスリンは、胎盤を通ることができないため、胎児に影響を与えることはありません。
食事療法で、血糖コントロールが思うようにうまく行かなかったり、それが原因でストレスを抱えてしまうよりは、医師の指示のもとによるインスリン治療を行うほうが、はるかにストレスを軽減できるはずです。
いづれにせよ、適切な治療を行えば、妊娠糖尿病は基本的に治ります。
中には、産後も2型糖尿病を発症してしまう方もおられますが、健康的な生活をするように心掛ければ、糖尿病の進行を食い止めることができるでしょう。
■まとめ
妊娠糖尿病とふつうの糖尿病では、発症原因の点において異なることが理解できましたが、治療に関しては共通点が多いようです。
妊娠糖尿病になってしまった方は、「どうして私がこんなことに?」とがっかりしたり、心配になるかも知れません。
しかし、長い目で見れば、糖尿病に対する治療を経験できたことは、健康的な生活を送るモチベーションを高めるものとなったのではないでしょうか?
そのため、ネガティブになってしまわずに、母子ともに健康で暮らせるよう、できるところから、健康に良い習慣や食生活などを取り入れてみるようにしましょう。